ぐりぐり日記

鑑賞した映画の感想を気ままに書いています。影響を強めに受けがちです。そんな別の自分になれる感覚が好きです。

ウィンドリバー ネタバレ感想

アメリカ先住民居留地の雪山でめちゃくちゃ胸糞の悪い事件が起こるが…

物語の展開ではなく、その実態のきつさに最後まで衝撃でした。

 

物語の随所で、居留区に住む人々、アメリカ先住民たちの暮らしが社会的にも文化的にも過酷な状況にさらされているというのがわかり、差別がどれほど根深いかがこの映画を通して描かれていました… サスペンスなだけでなく重い問題定義的な側面も内包しておりかなり見応えがありました…

 

先住民って日本にいると実感もなく、この映画を見なければこういう社会問題があることすらも知る機会はなかったと思います… 雪山に囲まれた超極寒の地という過酷さがあるだけでなく、経済体制も整っておらず、環境だけでなく人々の心も閉塞感があり、さらにその広大な土地に管轄する警察官は6人しかいないってヤバい状態…治安もクソもない。またアメリカの警察組織のシステム上、法の裁きなんて期待できない。完全なる無法地帯となっている。 なので己の手で裁きを下すしかない…私刑の肯定、否定ではなく、そうしなければ泣き寝入りするしかない状況にさせた社会のあり方に問題を感じさせるけど、

 

例えば主人公が、環境からグレてしまった少年に対して言う「俺は世界を憎むより、自分の感情と戦うことを選んだ」的なセリフなど、そんな状況で正しく生きようとする人たちの強さを強調するセリフや描写などがより印象的でした。

 

ここから若干ネタバレしています。

 

そんな今作の主人公は、居留地の動物保護のハンターで、過去の出来事を背負いつつも強く優しいヒーロー的なキャラクターのホークアイと、遵法精神と正義感の強い女FBI捜査官のワンダとで、バディものとしても面白かったです。ワンダは普通でしたが、ホークアイホークアイでした。(アベンジャーズ的に)アベンジャーズを引きずりすぎているせいでいい感じに安心感がありました笑

 

ちなみにこういう社会的なメッセージを出しつつも、物語としてはとてもシンプルで、映画は何か尋常ではないことが起きたな。と思わせるような場面から始まり、一つの事件の真相を丁寧な描写とともに追っていくという感じです。

 

その事件の真相が明かされる場面の演出には鳥肌がたった。緊張感からの、何が起きたのか、え?という一瞬の驚きと、そこから展開される胸糞の悪い描写で、見てるこちらの怒りも頂点に達した状態のまま、ついにバトルタイムが始まるというのは、感情の振れ幅が思いのままに誘導されたような見事な演出だと思いました。 制裁の仕方も、被害者の女性もこの地で戦っていた強い人間だったのだと彼女の尊厳を守って、戦うことを諦める方を選んだゴミクズどもとは、文字通り桁が違う人間としての圧倒的な格の差を見せつけるというやり方は、単に報いを受けさせるだけでなく、最後まで、強い人間を描いていて少しだけ救われる最後でした。 ちなみに、狩る予定だったピューマだかは、親子でいるところを見たから見逃したのかな!? 映画は、決してこの物語はフィクションではないと感じさせる強烈なテロップとともにエンドロールに入り、最後までずっしりとくる映画でした。